衝撃の写真集『水俣』が映画化 ~主演はジョニー・デップ~
1970年代の日本を舞台とする実話に基づいた映画『Minamata(邦題未定)』の写真が公開されました。
主演は「シザーハンズ」「パイレーツ・オブ・カリビアン」などで知られるジョニー・デップ。
本作でデップが演じるのは、日本における“四大公害病”のひとつで、1950年代に公式に認められた「水俣病」の実状を追った写真家ユージン・スミス。
本作は、はユージン・スミスと妻のエイリーン・美緒子・スミスが発表した『水俣:写真集』(三一書房刊、中尾ハジメ訳)を基にしています。
監督を務めるのは、俳優・プロデューサー・映画監督として活躍するアンドリュー・レヴィタス。
本作には、真田広之、浅野忠信、加瀬亮、國村隼といった日本の俳優陣も結集するとのことです。
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水俣病は、熊本県水俣市のチッソ水俣工場の工業排水に含まれていたメチル水銀を原因とする水銀中毒です。
チッソの排水は、魚介類を介して熊本県・鹿児島県の住民に甚大な中毒症状をもたらしました。
企業側の隠蔽や政府の対策の遅れなどにより、長期にわたって被害が広がったほか、その後の補償や救済をめぐる問題は現在までつながっています。
映画では、第二次世界大戦に戦争写真家として沖縄戦に従軍し、功績を評価されたスミスが友人の編集者から依頼を受け、水俣病を取材すべく日本を訪れることが描かれます。
実際にユージン・スミスは、1971年から3年間水俣に住んで、患者の姿や病気の実態、その後の様子を克明に撮影。
1972年にチッソの工場を取材した際には、従業員(企業に雇われた暴力団員ともされる)の暴行でカメラを破壊され、脊椎を損傷、片目を失明する重傷を負いました。
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原作となっている写真集は、1991年に新版が出て以来新刊での入手が困難な状態ですが、図書館に所蔵してある所も多いと思うので、ぜひ読んで欲しい、必読の書です。
スミスは写真のキャプションにもこだわっており、写真家仲間からは純粋に写真だけで見せないことを批判されることもありました。
でも、読むとスミスが“ジャーナリスト”であることが理解できます。
写真は、現実の一部分を切り取るものであり、報道写真においてはそれが致命的な欠点となってしまう事もあります。
凄惨な沖縄戦を目の当たりにしたスミスだからこそ、そういう独自の方向へと進んだのではないでしょうか。
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監督は、水俣病について「過去100年で最も悲惨、しかもあまり知られていない惨事のひとつ」だと述べ、またユージン・スミスについてはその偉業を称えながら「自分の仕事で真実を明かすため、そしてかつてないほど痛烈な写真を撮るために命をかけた」人物だと語っています。
製作スタッフは、撮影に先がけて、日本で水俣病患者や家族への面会や取材を行い、サポートを受けながら準備にあたってきたということです。
2019年2月1日現在、本作は日本での撮影が進められていて、今後はセルビアやモンテネグロでも撮影が実施されるとのこと。
アンドリュー監督は撮影開始にあたって、「出演者とスタッフの一人ひとりが、水俣の人々の声に耳を傾ける」とのコメントを発表しました。
映画、そして政治オタクとして、なにより日本人として映画の完成を心待ちにしています。
三一書房さんから、映画の公開に合わせて『水俣:写真集』が再刊行されることも切に願っています。