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「バイトテロ」はスポンサーを叩けないマスコミの卑劣な造語

外食チェーン店「大戸屋」で、以前Instagramのストーリーに投稿されたとみられる「不適切動画」が、2月16日に同一のTwitterアカウントから3回投稿されました。

動画には、マスクで顔を隠した人物がズボンを脱いだ状態で局部をお盆で隠したり取ったりする様子のほか、口からプリンを吐き出す様子などが映っていました。

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投稿したアルバイト従業員は大阪府の店舗に勤めていましたが、大戸屋は2月18日に解雇処分を発表。大戸屋本社は、

今回の不適切行為の本質は「食べものを粗末にするという、食べもの屋としてあってはならない行為を起してしまった」ことにあり、当社グループの全役員・従業員がこのことを重く受け止めなければなりません。

として、3月12日に原則として国内の全店舗を休業し、従業員への研修を行うと発表しました。

大戸屋によると、スマートフォンなど携帯端末の職場への持ち込みを禁じるほか、業務中の動画の撮影やSNS投稿の禁止、備品を業務サービス外で使わないことなどの誓約を研修で求めるという事です。

回転寿司チェーン・くら寿司ではゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻し、カラオケチェーン・ビッグエコーでは唐揚げをフライヤーに入れる前に床に擦り付け、すき家ではお玉を股に押し当て、セブン-イレブンではおでんのしらたきを吐き出す、ファミリーマートではペットボトルの蓋を舐めるなどの「不適切動画」の投稿が相次いでいます。

もちろん、衛生上問題がある行為については労働者が応分の処分を負うべきですが、雇っている側の使用者責任がまったく問われていないのはとても不自然に感じます。

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大戸屋の人気メニュー「たまごぷりん」

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「バイトテロ」という造語がテレビやネットで独り歩きしています。テロとはテロリズムの事で、過激な武力や暴力によって政権打倒を目指す考え方を示します。
非正規従業員の不祥事に「テロ」とは、本物のテロリズムの恐怖が薄れてしまいます。

マスコミやネットがおかしいのは、バイトだけを糾弾して使用者責任監督責任のある企業をほとんど批判しないことです。

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例えば大戸屋は、飲食店のバイトの中でも仕事量が多く、来客も多いため忙しいと言う声があります。
大戸屋のキッチンの仕事は冷凍食品を使用しないため、やることが非常にたくさんあります。

お盆にセットする係もポジションの一つで、ほぼすべてが定食メニューでありご飯・味噌汁とメイン料理、お漬物、お茶など手際よく1つのお盆に乗せていく必要があります。
この載せる場所も細かく決まっており、ランチやディナーの時間のピーク時は、注文が殺到するので、厨房はパニック状態になることもあります。
また、地方では、大戸屋のスタッフはもともと少ない事が多いようですが、お客さんは外まで列に並んで待っています。

大戸屋ではお店のメニューが半額で食べられる社割があり、それを「賄い」としているようですが、従業員からお金を取る賄いなんて考えられません。

このような理不尽な労働条件が、不満を蓄積させ「不適切」行為に走らせている側面は否定できないと思います。

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労働者が雇用主に抗議したい場合、「争議権」がありますから、ボイコット、サボタージュストライキといった労働争議を行うことができますが、こうした労働者の権利について、義務教育や高等教育で生徒に教えることはほとんどありません。

アルバイトやパートでも有給休暇を取得できる事すら知られていません。

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関西非正規労働組合によるシンポジウム

従業員の行為に対する責任の大元は雇用した企業側にあります。
企業にはそのバイトを雇用した責任や、教育、監督する責任があるはずです。

原因をつくったからといって、アルバイトに対して損害賠償等を請求する訴訟を起こすというのは不当です。

企業が自らの責任を転嫁しようとしていると言われても仕方がないのではないでしょうか。

実際に複数の動画の状況を確認すると、周囲に社員などの監督者がおらず、バイトに現場をまかせっきりの時間帯があったことが伺えますが、これは企業側によるコストカットの結果、起きていることでしょう。

言い換えれば、騒動を受けて信頼を落としたのは、そうした非正規労働者に依存しているという構造的問題が原因であって、大元は政府の経済政策のつけが末端に回ってきているだけです。

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テレビなどのマスコミが企業の責任を追及しないのは、明らかにバイトが不祥事を起こした企業が大口のスポンサーだからでしょう。

つまり、政権批判や大企業批判ができないため、そのかわりにお手軽な“バイト叩き”に精をだしているにすぎないのです。

不満を持つ全ての労働者の皆さん、あなたたちは恵まれています。「労働争議」という手段があるからです。
海外から来ている「技能実習生」の方々は、制度上雇用契約を結んでいないため「労働者」ではなく、労働組合に入ることもできず、争議行為も行うことができないのですから。

「バイトテロ」といういろいろな意味で有害な言葉を使わない、読まない、観ないことを実践していきたいと思います。