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【継読メモ】クジラ類は「特別な動物」なのか?

ご存知の通り、日本政府は2018年12月26日、IWC=国際捕鯨委員会から脱退し、今年7月から商業捕鯨を再開することを表明しました。

ちょうど今、私の目の前に読みかけの本があります。

「イルカは特別な動物である」はどこまで本当か 動物の知能という難題
ジャスティン・グレッグ (著), 芦屋雄高 (翻訳)

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しかしこれは図書館で借りたもので、返却期限までに読了できなさそうなので、この場に問題提起とメモとして記録しておきます。

 

私は、昔から「反捕鯨国」があることが疑問でした。それらの国々では、イルカを含むクジラ類を人間の法律で保護しようとしていたからです。

この「神話」「信仰」の震源は何なのか? 長年分かりませんでした。

そして昨年知ったのがこの本でした。

 

以下は文中で紹介されている、ある動物の能力です。

    • 個体数が数百にも達する群れで生活する。そして群れの中の個体を認識し覚えることができ、複雑な社会的ヒエラルキーを作る。
    • 群れの中の他の個体から、特定の行動を学習する。
    • 仲間や家族が苦しんでいるのを見ると、心拍数の上昇や不安を表す行動をする。
    • 食べ物を見つけると、複雑な一連の鳴き声を使って群れのメンバーに知らせる。
    • 周囲に迫る危険の種類によって、異なる何種類もの鳴き声がある。
    • 未来の事象を予測する能力、そして自制行動を示す。

かなり高度な能力だと思いますが、これはご期待のイルカではなく、ニワトリの能力です。ニワトリは一般的に考えられがちなほど愚かな動物ではありません。

イルカは、クジラ類の中でも歯を持つ比較的小型の種を指す便宜的な分類です。では、「知的なイルカ」という神話はいつ始まったのでしょうか。

それは、1958年のアメリカのジョン・カニンガム・リリーによる研究発表でした。

彼は、国立精神衛生研究所の医師・神経生理学者。その経緯は本書に譲るとして、半世紀以上経った現在でも、イルカは映画・テレビドラマ・小説などで「高い知能を持った、平和の象徴」としてのイメージが定着しています。

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私は、種を越えた比較を可能とする単一の指標があり、それによってあらゆる動物の知能が評価できるという考えは幻想で、傲慢だと思います。

知能というものは抽象的で捉えどころがなく、恣意的な価値観に基づいて評価しようとすることは、「非科学」です。

よって、クジラ類を「人間と同じ法的保護に値する」とすることは“信仰”という外はなく、絶滅の危険以外での議論は科学と非科学を混同させるもの、というのが現時点での考えです。

政治的な思惑には納得しかねますが、IWCを脱退したこと自体は正しい判断だったと思います。