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韓国のナプキンCMから考える、「生理」のタブー

2016年、イギリスのブランド「ボディーフォーム」によって、青い液体ではなく”赤い血”を使った生理用ナプキンの広告が初めて公開されました。

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生理をタブー視する世界的な文化のなかで大きな注目を浴びました。

そんな動きを受けて、文字コードの国際規格管理団体ユニコードコンソーシアム(Unicode Consortium)」が2019年にリリースする59種類の新たな絵文字は、車椅子に乗った人や補聴器をつけた耳、盲導犬の絵文字、そして生理中の女性を表現する「血液」など、多様なラインナップとなりました。

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生理中であることを表す絵文字

これらの絵文字は、2019年9月〜10月にスマートフォンなどのデバイスで使えるようになる予定とのことです。

そして、韓国の生理用ナプキンブランド「natracare(ナトラケア)」は、生理を真正面に扱うCMを2018年11月から相次いで公開しています。

「”その日”は爽快でも、輝きもしない。実は何もしたくない日が生理の日」としていて、このCMに対して韓国では「広告を見て感動した」などの賞賛の声が集まっています。


[나트라케어 2018 캠페인] 아무것도 하지 않아도 괜찮아, 그것 또한 너의 선택 (Full ver.)

その日も自信をもって白い服を着てください
その日も立ち止まらないでください
その日も心配なく眠りについてください
その日も仕事に集中してください
その日も私たちは輝かなきゃいけないから

軽やかな言葉に反して女性たちは憂鬱そうな様子で、前半に登場した女性たちが「痛くてイライラする」「不安だ」「絶対に爽快じゃない」「何もしたくない」「それが生理だ」と語っています。

また、別のCMでは、


내 몸을 위한 가장 중요한 결정은? 나트라케어👍 (feat.DADA Studio)

これは、生・理・帯(生理用ナプキン)広告です。
え?生理ナプキンと言うのが恥ずかしいですか?
ちょっと!
生理は女性が1年で実に65日もある、とっても自然で日常的な出来事でしょう。
生涯使うナプキンは約1万6000個。
ナプキンに使うお金だけでも、なんと600万ウォン。
生理は青い血でもなく、白い服を着て跳ねる日でもないです。
普段の生活用品よりずっとたくさん使うナプキン。
だから今、このナプキンの広告も、これ以上言う必要はないでしょう。
ありのままに、正直に、しつこく見てみましょう。

と話し、ナプキンをカッターナイフで切ったりマッチで火を点けたりと、まさにタブーを「切り開いて」います。

「ソウル経済」によると、「ナトラケア」は「非現実的な既存の生理用ナプキン広告への女性の反応が否定的な点に着目し、女性の心を率直に代弁するナプキン広告を企画することとなった」とし、「既存の広告では生理を”その日”と表現したのとは違って、広告としては初めて”生理”と表現した点で大きな意味があると思う」と説明したそうです。

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インドなどでは、月経中の少女を家畜小屋に放り込むなど生理に対する理解がなく、強い偏見のなかで、初潮が始まると学校に通うことができなくなる少女もいます。

2018年8月には、インド南部のある中学校で、女性教師が経血を漏らした12歳の少女を激しく叱責し、それが原因で少女が命を絶つという悲しいニュースがありました。

これは「インドだから」と言うわけではなく、日本でも似たような価値観が根強くあります。

1994年にはテレビドラマ化もされたマンガ『夏子の酒』(尾瀬あきら)をご存知の方もいるかと思いますが、主人公・夏子の祖母をメインとした前日譚『奈津の蔵』では、杜氏(造り酒屋)に嫁入りした奈津の苦闘の日々が描かれています。

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『奈津の蔵』(1)(講談社モーニングコミックス)

作中では、当時の理不尽な悪習や閉鎖的な村に苦しめられるのですが、象徴的なのは、「女性は蔵に立入禁止」というしきたりです。

酒蔵の家長の妻なのに、その酒蔵に入ることができない。当然奈津は夫に詰め寄りますが、夫の答えは「女の血は穢れているから」と言うものでした。

「穢れ」というのは日本古来からある神話から来る考えで、宗教的な意味合いが強いです。

醜聞まみれの政治家が、「禊(みそぎ)は済んだ」と言って復帰したりしますが、禊とは、穢れを清めるためにする宗教的儀式です。

「穢れ」に基づくさまざまな差別が今も根強く残っているのが、日本の現状です。

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日本の生理用品のCMは、今は青い液体状のものが使われていますが、すぐにそんな時代は終わると思います。

現代社会において、ジェンダーの問題を抜きにして生活することは難しくなっているからです。

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日本は、一部の人たちが蔑んでいる中国や韓国よりずっと遅れている文化後進国であるという現状を、直視する必要があるのではないでしょうか。