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Amazonが本の値引き販売を視野に ~日本の出版業界特殊事情を崩せるか~

アマゾンジャパンは1月31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表しました。
また、記者会見で、「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示しました。

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アマゾンジャパン本社(東京都目黒区)

買い切る書籍については出版社と協議して決定。
一定期間は出版社が設定した価格で販売しますが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するということです。

まずは、現在日本で本がどのように流通しているか見てみましょう。

 

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こんな感じで、「取次」と呼ばれる卸問屋のような存在が大きな特徴です。

また、日本で本が定価で統一して売られているのは、再販制度(再販売価格維持)」という制度が適用されているからです。

メーカーによる価格拘束は、本来独占禁止法により禁止されている行為ですが、新聞などの著作物<書籍、雑誌、新聞、音楽ソフト(音楽用CD、レコード、音楽用テープ)の、いわゆる「メディア4品目」>については例外として再販制度が認められてきました。

著作物の過剰な価格競争が、出版文化を崩壊させないようにすることが目的です。
タバコと同じ、あくまで「例外」という事ですね。

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「取次」は海外にもありますが、雑誌と書籍を一緒に扱うところはありません。
また、書店が書籍、雑誌を仕入れる場合、日本ほど取次経由で仕入れる比率が高いという国もほかにはないと思います。

日本出版販売(日販)トーハンが大手として知られています。
よくベストセラーのランキングで、「トーハン調べ」などと表記されますよね。つまり統計として通用するほど、ほとんどの本が取次を通しているのが現状です。

この結果、ある本が1冊定価1,000円で、標準的な契約内容で見てみると、売り上げの分配はおおよそこのようになります。

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日本の場合、書店が出版社から直接本を買い取ることは少なく、取次から「配本」される本を並べているだけです。
あえて悪く言うと、「買ってないから、売れなさそうな本はすぐ返本できる」という事です。

「出版不況」と言いながら、出版点数と返本率が高いのは、取次への依存度が高すぎる状態が長年続いてきた弊害だと思います。

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私は主に図書館を利用していますが、「図書館利用者は著者に利益を還元しないからダメ」のような言説を何度も目にしてきましたし、そういう人は今も一定数います。
しかし、図書館に所蔵してある本は、誰が購入しているのか考えたことはあるんでしょうかね。

読書愛好家として確実に言えることは、

「読まれないで棄てられる本ほど不幸なものはない」

という事です。

書店で段ボールに入ったまま返本され、裁断されていくより、図書館でも、ブックオフでも、読まれた方が本にとって良いに決まってます。
それが理解できないという人は、趣味は読書とか、読書家とか名乗ってほしくありません。

ですので、Amazonが売れない本を値引きするという方針には賛成です。
それは本の価値を貶めるものではなく、読まれるチャンスすら与えられなかった本たちに光を当てるものだと思います。

その結果、取次がつぶれたりしても、むしろ役割を終えたと思って安心して消えていってください。

本にも心があるのですから。