映画・音楽・本、そして政治オタク

何と言われようが、書きたいことを書こう。あなたも。

Amazonが本の値引き販売を視野に ~日本の出版業界特殊事情を崩せるか~

アマゾンジャパンは1月31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表しました。
また、記者会見で、「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示しました。

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アマゾンジャパン本社(東京都目黒区)

買い切る書籍については出版社と協議して決定。
一定期間は出版社が設定した価格で販売しますが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するということです。

まずは、現在日本で本がどのように流通しているか見てみましょう。

 

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こんな感じで、「取次」と呼ばれる卸問屋のような存在が大きな特徴です。

また、日本で本が定価で統一して売られているのは、再販制度(再販売価格維持)」という制度が適用されているからです。

メーカーによる価格拘束は、本来独占禁止法により禁止されている行為ですが、新聞などの著作物<書籍、雑誌、新聞、音楽ソフト(音楽用CD、レコード、音楽用テープ)の、いわゆる「メディア4品目」>については例外として再販制度が認められてきました。

著作物の過剰な価格競争が、出版文化を崩壊させないようにすることが目的です。
タバコと同じ、あくまで「例外」という事ですね。

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「取次」は海外にもありますが、雑誌と書籍を一緒に扱うところはありません。
また、書店が書籍、雑誌を仕入れる場合、日本ほど取次経由で仕入れる比率が高いという国もほかにはないと思います。

日本出版販売(日販)トーハンが大手として知られています。
よくベストセラーのランキングで、「トーハン調べ」などと表記されますよね。つまり統計として通用するほど、ほとんどの本が取次を通しているのが現状です。

この結果、ある本が1冊定価1,000円で、標準的な契約内容で見てみると、売り上げの分配はおおよそこのようになります。

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日本の場合、書店が出版社から直接本を買い取ることは少なく、取次から「配本」される本を並べているだけです。
あえて悪く言うと、「買ってないから、売れなさそうな本はすぐ返本できる」という事です。

「出版不況」と言いながら、出版点数と返本率が高いのは、取次への依存度が高すぎる状態が長年続いてきた弊害だと思います。

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私は主に図書館を利用していますが、「図書館利用者は著者に利益を還元しないからダメ」のような言説を何度も目にしてきましたし、そういう人は今も一定数います。
しかし、図書館に所蔵してある本は、誰が購入しているのか考えたことはあるんでしょうかね。

読書愛好家として確実に言えることは、

「読まれないで棄てられる本ほど不幸なものはない」

という事です。

書店で段ボールに入ったまま返本され、裁断されていくより、図書館でも、ブックオフでも、読まれた方が本にとって良いに決まってます。
それが理解できないという人は、趣味は読書とか、読書家とか名乗ってほしくありません。

ですので、Amazonが売れない本を値引きするという方針には賛成です。
それは本の価値を貶めるものではなく、読まれるチャンスすら与えられなかった本たちに光を当てるものだと思います。

その結果、取次がつぶれたりしても、むしろ役割を終えたと思って安心して消えていってください。

本にも心があるのですから。

 

マイケル・ジャクソン告発ドキュメント映画の衝撃 ~虐待の本質~

1月25日、アメリカのユタ州・パークシティで開催されたサンダンス映画祭で、マイケル・ジャクソン(以下:マイケル)の児童性的虐待の疑惑について語られた、4時間のドキュメンタリー映画がプレミア上映されました。

www.huffingtonpost.com

なぜか、サンダンス映画祭の公式サイトには掲載されていないのですが、これは、2019年に米ケーブルテレビHBOで放送予定の『Leaving Neverland (リービング・ネバーランド)』というドキュメント映画です。

ネバーランド」は、一般的には「ピーターパン」の舞台として知られていますが、一方マイケルが1988年、カリフォルニア州サンタバーバラ近郊に3,000エーカー(約367万坪)の広大な土地を購入し、列車の線路を敷き、動物園、遊園地を作り、「ピーターパン」の舞台である大人にならない島をイメージして建設されたもの、としても有名です。

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上映された『リービング・ネバーランド』は、マイケルの過去の栄光にほとんど触れず、ほぼ全編において告発者の2人、子供の時にマイケルに性的虐待を受けたと訴えるウェイド・ロブソンさんとジェームズ・セーフチャックさんを中心に描かれているそうです。

映画祭の責任者は、この映画が観客の過去のトラウマなどを引き起こすトリガーになる可能性があるとして注意し、必要に応じてすぐ対応できるようにメンタル・カウンセラーをロビーに待機させたと言いますから、かなり衝撃的な内容だったのでしょう。

実際、観客は休憩中、ショックで館内を歩き回っていたり、一部は、あまりにも衝撃的な内容に、上映後の質疑応答まで残れなかったと言うことです。

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上映当日は、マイケルのファンたちが上映に抗議するプラカードを持って会場前でアピールしましたが、大きな混乱はなかったようです。

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マイケルの言葉、「Lies run sprints, but The truth runs marathons.(嘘はあっという間に伝わるが、真実が伝わるには時間がかかる)」は、含蓄ある言葉ですね。

ジャクソンファミリーはこの映画について、「公開リンチだ」と批判しています。

「みんなマイケルを悪者にしたがります。彼がユニークだから。彼は完全なる捜査を受けました。突然のネバーランド強制捜査や、陪審裁判も...そして完全無罪と判決が出ています。この件に関してひとつも証拠が出ていないのです。それなのにメディアは嘘の告発を信じようとするのです」

 と声明で述べました。

ちなみに“ユニーク”は、外来語として使われている「面白い」や「珍しい」というニュアンスではなく、もともとの「唯一の」「他に例を見ない」という意味です。

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2005年の裁判では、ロブソンさんもセーフチャックさんもマイケルから性的虐待を受けなかったと証言しました。

しかし後になり、彼らが昔マイケルにされた事が何だったのかを理解し、ジャクソンの会社を訴訟しようとしたが、不成立で終わった経緯があります。

確かに、自分が受けている行為について、子供が「性的虐待かどうか」なんて判断できるはずがありません。
おそらくは、マイケル自身も自分のしていることが性的虐待であるという自覚はなかったのではないかと思います。

だからこそ、被害者の声には真摯に耳を傾けなくてはならないと思います。

 

質疑応答でセーフチャックさんは、彼もロブソンさんもこの映画に参加するにあたり、製作側から金銭を受け取っていない、と強調しました。

参加したのは、同じような経験をした人に少しでも癒しを与えたいから、と語りました。

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マイケルは、ポピュラー音楽史に残る大スターです。
しかし、この映画を観た、子供の時に性的虐待を受けたという観客は、ロブソンさんとセーフチャックさんは

マイケル・ジャクソンよりずっと世界に良い変化を与えるだろう」

と言いました。

ずっとネバーランドにはいられないのですね。

 

オタクは1年にいくらつぎ込むのか。 ~一番金を使ってるのは何オタク?~

オタクの消費動向をデータとしてまとめた矢野経済研究所のレポート(「オタク」に関する消費者アンケート調査)が1月24日に発表されました。

国内に住む15~69歳までの男女1万408人にインターネットでアンケート調査を実施。
オタクと自認している人またはオタクと言われたことのある人に対し、どの分野に興味があるか、年間の消費額はどのくらいかなどを聞いたそうです。

「オタク」という言葉は1980年代に生まれ、「ある分野に非常に詳しかったり、特定の趣味に非常に没頭している人」というニュアンスで使われ始めました。
ですが、暗にアニメ・マンガ・ゲームの愛好者を指し、「マニア」「フリーク」「ファン」よりも一段低い中途半端な存在としての呼称だったように思います。
テンプレとしてのイメージは、

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こんな感じです。

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しかし今周りを見渡してみると、自分を含め、「オタク」という言葉にネガティブなニュアンスは薄まったと思います。

逆に、多様化してひとつの市場として成立していますよね。

レポートのデータをグラフにしてみました。

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割合としては、マンガ・アニメ・アイドル・オンラインゲームが四天王と言えそうです。
かなり細分化していますが、「マンガ」「アニメ」については3年連続で1位、2位を占めているとのこと。

ただ、経年で調査している20分野では、アイドル分野以外のすべてで人数が減少しているそうです。
政治オタクは、悲しいことに統計の対象にすらなっていません。

それでは、世のオタクたちは、平均どのくらいの額を好きな分野につぎ込んでいるのでしょうか。

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Googleスプレッドシートさんでサクッとグラフにしてみましたが、ダントツでアイドルオタク(ドルオタ)の皆さんの消費額が高いです。
鉄道模型は、人数よりも、模型そのものが高価というのがありそうです。
メイドカフェ執事カフェも利用料金が高いのでしょうね。

前述の通り、オタクという呼称は、ある分野に非常に詳しかったり、特定の趣味に非常に没頭している人に使われ、“マイノリティー”として扱われてきました。

しかし、オタク市場の拡大に伴い、「近年『オタク』という言葉からネガティブなイメージは薄れつつあり、『オタク』はもはやマイナーな存在ではなくなっている」矢野経済研究所は指摘。

マーケティングの専門家が調査に基づいて言っているのですから、これは事実として受け止めるべきだと思います。

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しかし、2018年にKDDI総合研究所が発表したレポートでは、意外な結果が見えています。

18~34歳のオタク1000人を対象にしたアンケートで、展示や物販、同人イベントのほか、ミュージカルやライブに「参加したことがない」と答えた人はいずれも65%以上を占めています。反面、1カ月に2回以上足を運ぶ人は2%以下でした。

つまり、月に3万円以上を推しにつぎ込んでいる1~2%のコア層が市場を支えている、という側面もあるという事です。
これはとても重要なこととして認識しなければなりません。

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好きなものにお金をかけるのは当然のことですが、大別して「応援・還元」「自己満足」「優越感」の3種類の心理があるとKDDI総合研究所では分析しています。

しかしながら、「新商品を誰よりも早く手に入れたい」などの優越感よりも、「入手できるものはできるだけ収集したい」といったコレクション目的や、「作品の制作者にお金が入るのであれば払うことに抵抗感はない」といった応援目的のほうが多く割合を占めていたそうです。
フライングゲットは意外と主流ではないようです。

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オタク、マニア、コレクター、ファン、フリークなど様々な呼び方がありますが、あまりこだわる必要はないと思います。

好きなものを、好きなように楽しめばそれでいい。
愛好者どうしでいがみ合うことほど不毛なことはありません。

どうぞあなたもより良いオタクライフを!

 

体育が大っ嫌いでも輝ける「eスポーツ」にもっと盛り上がってほしい!

学校が楽しいのは、勉強ができるごく一握りの生徒だけ。
ましてや体育など、ほとんどの生徒が運動神経「中の下」ですから、楽しくない。
参加したくないという生徒がほとんどではないでしょうか。

そんな「スポーツは運動能力の高い人しかできない」という常識を覆しつつあるのが、「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」です。

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PCゲーム『Dota 2』の公式世界大会『The International 2017』より

日本でも、2018年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされているので、聞いたことがある人も多いと思います。

2016年に、「日本eスポーツ連合(JeSU)」

が発足したことで、公式に“プロライセンス”が発行されるようになりました。
対戦型のシューティングや格闘ゲーム、有名なところではぷよぷよ『ウィニングイレブン』でもプロによる大会が開かれています。


eスポーツMaX : 第1回ぷよぷよ達人決定戦◆決勝「Tom vs くまちょむ」

「eスポーツ」とは、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称です。

世界全体の競技人口は1億人以上、市場規模は1000億円を超えつつあるといいます。

2018年のアジア競技大会(ジャカルタ)では、デモンストレーション種目としてeスポーツが採用され、日本からも10名の代表選手が派遣されました。
2022年大会(杭州)では、正式にメダル種目として採用されることが決まっているそうです。

そして今年10月4日〜6日にかけて開催される茨城国体(国民体育大会)では、文化プログラムとして、グランツーリスモsports」「ウィニングイレブン2019」「ぷよぷよeスポーツ」が採用されました。

国が主催する日本最大の競技会にeスポーツが加わったのは、大きな進展です。

また、2024年に開催されるパリオリンピックパラリンピックの新種目としてもeスポーツの採用が検討されていると言われています。

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ただ、「これまで認められていなかった才能が認められることは良いこと」などの肯定的な意見もある一方で、「ゲームを“スポーツ”と呼ぶことに違和感」「汗水流して努力しているアスリートと同じとは思えない」といった否定的な意見も多く見られるのも事実です。

日本では、「スポーツ」というと身体運動を伴うものと捉えられがちですが、本来の「sport」には「楽しむこと・競い合うこと」といった意味もあり、そうした言葉の理解や受け止め方の違いによるところも大きいです。

でも、eスポーツに否定的な人は、ビリヤードをどう思っているのでしょうか。

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ビリヤードにはもちろんプロがいます。様々なルールがありますが、最もメジャーなナインボールだと、先攻を取られた場合、そのまま全ゲーム撞き切られて自分はずっと座ったまま、というシーンもよくあるのです。

これを、「体を動かさないからスポーツじゃない」とは誰も言えないでしょう。

これは、「静と動」という競技の性質によるもので、一般的な陸上競技や球技しかスポーツと言うものを知らない無知から来る先入観でしかありません。

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World Championship Spotlight: East Asia (2017) より

日本でeスポーツが普及しきれていないもう一つの大きな要因が法律上の問題です。

eスポーツに大きく影響する法律が、刑法(賭博及び富くじに関する罪、以下賭博罪)風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律(以下、風営法)の2つです。

賭博罪では「偶然の勝敗により、財物・財産上の利益の得喪を争うこと」が禁止されており、eスポーツの大会において参加費を徴収し、賞金を提供した場合、これに該当する恐れがあるのです。

これが賞金の高額化や、収入が限定されるためプロとして自立できないなど、大会の開催を妨げる要因となっています。

風営法についても同様で、「ゲーム機を設置し、店舗を構えて営業する」場合には、ゲームの結果に応じて景品を提供することが禁じられており、大会の開催を妨げています。

確かにゲームセンターの営業時間も風営法に準じています。

でもここで疑問に思うのは、「競馬やカジノはいいのに、何でeスポーツはダメなの?」という事なんです。

 

それはたぶん、「スポーツ」の概念が拡張されることで、「体育なんてなんの根拠もないじゃん」という、教育での既成の価値観の崩壊が起こることを快く思っていないからではないかと思います。
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プロゲーマーの人たちも、アスリートと同じように、汗も、血も、涙も流しています。

日本にも、日本人初のプロゲーマーであるウメハラ(梅原大吾)選手や、東大卒プロゲーマーという異色の経歴を持つときど(谷口一)選手のようにスター選手は存在するものの、今はまだゲーム界のスターにすぎないのは事実です。

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ウメハラ選手、ときど選手(左から)


eスポーツの「楽しさ」や「競技性」、さらにはeスポーツで生計を立てるプロゲーマーの存在を、正しく伝えていくことが欠かせないと思います。

プロゲーマーたちは、ゲームで遊んでいるのではなく、より高みを目指して闘っているのです。

オリンピック・パラリンピックの種目としての採用については、プロゲーマーたちは、「どうでもいい」と思っている人がほとんどです。
目の前の大会などでそれどころではないんですね。


国際オリンピック委員会会長(IOC)は、eスポーツはオリンピックの価値観に矛盾しており受け入れることはできない(「Killer Games」は暴力を助長するから)と発言しています。
だったら実際に殴り合うボクシングはどうなのか、という話ですよね。
バンクーバー五輪では、リュージュの競技で痛ましい死亡事故がありました。

www.asahi.com

また国際カジノ研究所では、オリンピックに採用されない理由として、ゲームソフトメーカーの著作権が問題になるとしています。
と言うか、オリンピック自体商業イベントなので、単に利権の問題ではないかと。
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私は、勉強も体育も苦手で、「またゲームやってんの!」と怒られていた人たちが輝けるeスポーツには、大きな可能性があると確信しています。

“総活躍社会”なんてスローガンは要らないから、平等なチャンスが当たり前の社会を!

(2019/2/2:国体について加筆)

 

 

痴漢被害とスカートの長さの関係は? ~ハラスメントの実態を数値化する試みから考えよう~

評論家の荻上チキさんらが1月21日、厚生労働省で記者会見を開き、電車など公共空間やSNSでのハラスメント行為の調査結果を発表しました。

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記者会見した小島慶子さん、永田夏来さん、荻上チキさん(左から)

調査は2018年9月、東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県に住む15〜49歳の男女27万1480人を対象に、インターネットで行ったそうです(有効回答数は1万1903人)。

ハラスメントのない未来を目指す「#WeToo Japan」によるクラウドファンディングなどで資金を集めて調査を行いました。

we-too.jp

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まずは、実際に性的被害に遭った人のデータです。
(拙いグラフで恐縮ですが、ご容赦ください)

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「体を触られる」「性器など体の一部を直接見せられる」など何らかの被害を受けた経験がある女性は7割に上り、男性の3割を大きく上回っています。

電車内での痴漢被害経験と、スカートの長さや服装、通勤・通学時間との関係も調べています。
スカートの長さと被害の有無はほとんど相関がなかった一方、通勤時間が長く、私服よりも制服を着ていた方が被害に遭いやすかったそうです。

「本人がコントロールできない要因で痴漢被害に遭っていることが分かった。本人努力には限界があり、制服をなくしたり、社会に蔓延しているジェンダー差別をなくすことが、遠回りに見えても痴漢被害をなくす効果的な方法です」(荻上チキさん)

 制服を無くす、というのは効果があると思います。軍隊じゃないんだから制服を着る必然性がないし、何より“JKビジネス”などの性的対象になっている現状からすると、デメリットしかない気がします。

 

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LINE、FacebookTwitterInstagramーー。どのSNSでもハラスメントはありますが、「不快な性的アプローチを繰り返された」経験はすべてのSNSで女性の方が多く、最も高かったのはTwitterで12.2%だそうです。

一方、「見知らぬ相手に誹謗中傷された」経験は、すべてのSNSで男性が女性を上回ったとのこと。最も高いのはInstagramで15.9%。

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 ハラスメントや性的被害を訴えると、逆に被害者が責められることがあります。この調査からは、そんな現状と課題も浮かんだと言います。

「ワールドカップ開催中の渋谷など、人混みで痴漢にあっても仕方ない」と考える人は、男性で30.9%、女性で24.7%

「露出が高い服を着ている人は、痴漢にあっても仕方ない」という項目では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した女性は男性を上回る45.6%で、女性の間でも意見が分かれたということです。

一方、こんなデータもあります。

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そして、「何がセクハラか分からない」。
不快だと思う境界は、男女によって大きく異なることも明らかになりました。

例えば、女性の9割は「見ず知らずの異性から連絡先を渡される」ことを「不快」だと感じるが、男性の4割近くは「不快」だとは感じていません。
「自分の体を触られる」ことを不快だと感じない女性は1.6%ですが、男性では9.9%に上っています。

「男女の認識差はもちろん、同じ性別でも認識には個人差がある。数字は数字。少数派が多数派に合わせろ、というのではなく、どういう社会のあり方を目指すのか、という議論のたたき台にしてほしい」(永田夏来さん)

 「ほら、女性だって被害者に落ち度があると思っている、と数字を盾にとる人もいるかもしれない。そうではなく、『ハラスメントはいけないんだ』という前提を共有したうえで、なぜこんな風に考えてしまうんだろう、というところを議論したい」(小島慶子さん)

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私は、ハラスメントの認識をデータとして可視化したことは、とても重要で大事なことだと思います。

と言うか、こういうのって、国が真っ先にやる事じゃないの? と思ったりしますが、現在厚生労働省で発覚している賃金データ捏造・改ざんを見ると、もはや政府や役所は信用できません。

調査では、既婚未婚や子どもの有無、親との同居、学歴や年収なども尋ねていて、今後はさらに分析を重ねていく予定だそうです。とても気になりますね。

数値はあくまで数値。
それをもとに皆が自分の頭で、自分は人を傷つけていないか、傷つけないためにどうすればいいのか、考えなければならないと思います。

 

【継読メモ】日本人対朝鮮人 ~永六輔さん&辛淑玉さんの対話から学ぶ大事なこと~

また返却期限までに読了できなさそうだけど重要な本があるので、メモと記録を残しておきます。

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『日本人対朝鮮人 決裂か、和解か?
永六輔 辛淑玉
光文社(1999年)

タイトルは物騒ですが、きちんとした対談本です。
これを読んでいる最中に、韓国と自衛隊との「レーダー照射」問題が起き、図らずもタイムリーな本となりました。

 

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永六輔さんは、随筆家、作詞家、タレントとして活躍した、日本を代表する文化人です。坂本九上を向いて歩こうの作詞をした人、と言えば納得でしょう。

2016年に亡くなりました。

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辛淑玉(シン スゴ)さんは、人材育成コンサルタント、「在日外国人・留学生、国際交流、行政への改策提言」を活動分野とする政治活動家で、現在60歳。
のりこえねっとヘイトスピーチレイシズムを乗り越える国際ネットワーク)の共同代表を務めています。

この2人が、日本に住む日本人と韓国(朝鮮)人として、日本と朝鮮の関係を生活習慣や日常のレベルから本音で語り合っているのが本書です。

ちょっと驚いたのが、浅草に生まれて、在日朝鮮人の方とも親交があり、安保反対と言っていた永さんでさえ、私たちと同じような偏見を持っていたことです。

でも、永さんは桜が朝鮮から入ってきて、唐辛子が日本から韓国に渡ったことも知っていて、
「日本人は桜を美しく感じるし、韓国人はキムチを毎日美味しく食べる。そこに戻ればいいんじゃないか」
ってちゃんと言ってくれる。

本当に、そこに尽きると思います。

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辛さんは、通名“新山節子”と言います。
節子は、当時絶大な人気があった女優の原節子さんから取って、新山は、音読みで「シンさん」と読めるようにつけたんだそうです。

「裏読み」と言って、1910年に韓国が日本に併呑されて日本名への創氏改名を迫られたときに、当時の朝鮮人たちが、少しでも本当の名前が残るようにと工夫した結果だそうです。

日本の外交について、辛さんは「日本人は、みんなに好かれたいと思う」からうまく行かないのではないかと言います。

「無理に仲良くする必要はない。ふだんは悪口を言い合っていても、緊急時には助け合う。そんな“悪友”みたいな関係でいいのでは」

確かにそう思います。

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日本書紀新羅征伐(199年ごろ)から、豊臣秀吉朝鮮征伐、そして西郷隆盛による征韓論と、ここ千数百年にわたって、朝鮮を「征伐」して滅ぼそうという大きな戦が続いています。

「征伐されるような悪いことを、何か朝鮮がしたんでしょうか」

と言う辛さんの疑問には、誰も答えられないのではないでしょうか。

まだ序盤なのにこの濃さです。

ちなみに、辛さんは日本の小学校から朝鮮学校編入したので、「思想的問題児」とされていじめられていたそうです。

日本人でも朝鮮人でも、嫌いなやつは嫌い、と言っています。

また続きを読みたい本ですね。

 

日本の「国防」の時代錯誤は北朝鮮と同レベル

今、日本の軍事力が、間違った方向に拡大しています。

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維持費やミサイル費用を含めれば6000億円を超えるとも指摘されるイージス・アショアイージス艦を用いた弾道ミサイル防衛システム)2基を筆頭に、最新鋭ステルス戦闘機F35を105機など、トランプ大統領を喜ばせるためにアメリカ製兵器の購入を次々に決めました。

その結果、防衛費は2019年度当初予算案では5兆2574億円まで拡大しています。

消費税8%の税収がおよそ22兆円(財務省ホームページより)ですから、その1/4に匹敵する額です。

その一方で、自衛官が使用するトイレットペーパーは1回当たりの基準を決められていて、実質的に自費でトイレットペーパーを購入していたというほど予算の配分が偏っています。

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日本の軍事力である自衛隊は、「国防」の目的においてのみ存在を許されています。
それは、専守防衛という厳しい行動規定に象徴されています。

専守防衛は、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」と定義されています。

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歴代首相、防衛大臣は、専守防衛の境界を超える武器は購入しない、配備しないという姿勢をとってきました。
それは過去、「防衛費はGNP(国民総生産)の1%を超えない」という政権の“自主規制”として明文化されていました。

しかし海部元首相による自衛隊の“海外派遣”を機に、自衛隊は軍隊として世界中に影響力を及ぼす存在へと性質を変えられました。

政府は、2018年12月に新たな「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画(2019~2023年度)」閣議決定しました。


中期防衛力整備計画まとまる 中国を強く意識(13/12/12)

これには、長距離ミサイルの確保も盛り込まれました。

この方針を聞いて、真っ先に「北朝鮮みたいなミサイル外交だなぁ」と思いました。

今の政権にとっての最大の仮想敵国は北朝鮮でしょう。
この計画は、北朝鮮による攻撃への対処から始まっています。そのような発想から出てきた敵基地攻撃能力保有論は、専守防衛政策からの逸脱を招く危険性があります。

つまり、自衛のために先に攻撃して無力化するという、いつでも日本から攻撃して良い何でもありの状態に突入したということです。
過去に侵略を受けた中国や北朝鮮、韓国が緊張・警戒するのも当然でしょう。

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それでは、なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

端的に言うと、「防衛政策、外交に詳しい議員がいなくなった」のだと思います。

現在の小選挙区制度では、有権者が強い関心を抱く分野の政策を訴えなければ当選できません。

大多数の有権者の関心事は社会保障や経済であり、防衛問題ではありません。だから、防衛問題に精通した議員がいなくなってしまったのです。

ですので、今の与党議員は、とりあえずこの本を読んでもらいたいです。

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沈黙の艦隊(1
かわぐちかいじ

自衛隊の存在意義や専守防衛の定義、そして不可避な戦場で実際にどうなるのか。

大事なことがとても面白く学べます。

セリフや説明が多いですが、無理な方はアニメ版でもOKです。
出来はかなりいいです。

というわけで、今日本のメディアは、北朝鮮を見て「時代錯誤」と笑っていますが、日本もやっていることは同レベルと言っていいと思います。

争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない。